ゾーンシステム FAQ集      

Q: 画面フォーマットが大きくなると、被写界深度は浅くなる?

A: 画面のサイズ(長さ)をn倍し、それに比例してレンズの焦点距離をn倍にする(すなわち、同じ画角にする)とき、同じ被写界深度を得るには絞り(f値)もn倍しなければなりません。

たとえば、35mm判にくらべ、4×5判は対角線長さが約3.5倍になります。 従って 50mm f8 相当の画角と被写界深度を得るためには 4×5で 175mm(市販レンズにはありませんが) f28に絞る必要があります。
逆に画面サイズの小さいコンパクトデジカメやミノックスでは、あまり絞らなくてもパンフォーカスになります。
Q: なぜフィルム感度を設定する必要があるのか? メーカーが厳密に測定し、保証しているのではないのか?

A: フィルムの感度は、現像液、現像方法(タンク現像、皿現像など)、液温、攪拌方法などで大きく変化します。 メーカーの感度数値はISOの規定に従って算出した公称値で、私たちが使う実用感度と同じになる保証はありません。 一人一人が自分のやり方で実用感度を見つける必要があります。
Q: フィルム現像は、セーフライトで画像を確認し、打ち切り時間を決めればよいのでは?

A: 暗緑色のセーフライトを使う現像途中の画像確認にはかなりの経験が必要です。 この方法には客観性がなく勘や経験が優先され、暗室作業の不安感も解消しません。 現像は化学であり、温度と攪拌を一定にすることにより時間で処理するほうが合理的です。
Q: ゾーンシステムは1920年代に開発された古い技法だ。 現代のフィルムはラチチュードが広く、粒状性も良い。 厳密な露出のコントロールは不要で、「写るんです」の様に、多めに露光すればよいのでは?

A: ゾーンシステムは光とゾーン、露光と現像、ネガとプリントの関係を明快にするシステムといえます。 プリントするときに強いイメージが湧いても、ネガに十分な情報がなければ目的は達成できません。 どのようなプリントを望むかビジュアライズすることで必要な露出が見つかり、正しいネガ作りにつながります。 多めに露光することの根拠は何か、ラチチュードが広いフィルムの特性は何か、ゾーンシステムの中に答えがあります。
Q: ブラケット露光すれば良いのでは?

A: ブラケット露光とゾーンシステムは何の関係もありません。
ゾーンシステムは被写体の光をゾーンとしてとらえ、印画紙の10ゾーンとマッチさせる方法で、それゆえにビジュアライズが可能になります。ブラケット露光はゾーンを動かしてしまい、感度や現像時間もあいまいなものにしてしまいます。 
Q: N−1、N+1現像を行う場合、感度設定は変えなくて良いのか?

A: 事前のテストが必要ですが、マイナス現像ではフィルムの感度を下げ、プラス現像では上げるようにします。
Q: 印画紙は、なぜバライタしか使わないのか? RCはだめか?

A: バライタ紙の白色層にはゼラチンと硫酸バリウムが使われ、RCペーパーの白色層にはポリエチレンと二酸化チタンた使われています。 最大白という点でバライタ紙の白さが勝っているようです。 また、乳剤中の銀の量もバライタ紙のほうが多いといわれ、この点からも最大黒は高いといえます。 このことから、プリントにおける美しさという点でバライタ紙は有利だといえるでしょう。 またポリエチレンの耐久性も未知数で、時間が経ったプリントは曲げたときヒビが入る場合もあるようです。
Q: VC(マルチグレード)印画紙は使わないのか?
   フィルム現像を一定にして、印画紙の号数をネガに合わせてはいけないのか?


A: ゾーンシステムは、フィルムの感度基準点を見つけ、2号印画紙のゾーンの描写を標準現像時間の基準点としています。
この基準点を押さえておくことで、ゾーンシステムは成立します。 ここを押さえておけば、VCペーパーの使用も可能です。

すべてあいまいなままVCペーパーの使用では、ゾーンシステムは成立しません。
Q: ゾーンシステムを利用すると、覆い焼き、焼きこみをしなくてよくなるのか?

A: 覆い焼き、焼き込みとゾーンシステムは何の関係もありません。 撮影レンズの周辺光量不足を補ったり、プリントコントロールのために多用することもあります。
Q: 引伸しレンズの焦点距離を変えても、f値が同じであれば露光時間は同じ?

A: ネガからプリントへの拡大率が同じ場合、絞り値(f値)が同じであれば、引伸ばしレンズの焦点距離に関係なく、露光時間も同じになります。
キャビネ版など小さなサイズにプリントするとき、焦点距離の長いレンズに替えた方がランプハウスの位置を高くでき、作業がしやすくなります。 この場合もf値を同じにすれば露光時間も同じになります。

引伸ばしや接写のようにレンズの繰り出し量が多い場合、絞り環に刻印されたf値は次の式で示される「有効f値」に変化します。
 有効f値=(1+拡大率)×f値
有効f値は拡大率で決まり、焦点距離には無関係です。※  従って、拡大率が一定なら露出時間も一定です。

参考:
接写の露出倍数(Bellows factor)も同様に拡大率で決まります。 これを利用して、被写体の位置に寸法のわかっているものを置き、ピントグラス上の大きさを測ることで露出倍数を求めることが出来ます。
http://www.salzgeber.at/disc/index.html

※ 厳密には次を参照
 小倉敏布 写真レンズの基礎と発展 p44  朝日ソノラマ クラシックカメラ選書
Q: 標準反射率はなぜ18%なのか?

A: 黒の反射率が3.6%、白の反射率が90%であることから来ています。 どのような被写体でも黒、灰、白が点在する被写体とみなし、平均するとこの18%グレーになると想定すれば、ほぼ正しい露光が得られることになります。

反射率 反射濃度
=log10(1/反射率)
説明
90% 0.05 ハイライト
18% 0.74 中間グレー
3.6% 1.44 シャドー

地球全体の平均値はちょうどこのグレーになるようです。
Q: f64などの小絞りにすると、回折で画像のシャープさが落ちるのでは?

A: 平面の複写は別として、一般の大判写真では回折の悪影響より、被写界深度が増す効果のほうが大きいようです。

理想レンズを絞った場合の解像力は次の式で示されます
 1/(1.22×f値×光の波長)
たとえば絞りをf11にした場合は約136本/mm、f22で68本/mm、f64では23本/mmとなります。
(光の波長が0.00055mmの場合) 
35mm判ではプリント時の拡大率が大きいので100本/mm程度が目安であり、普通のレンズでは最小絞りをf22程度にしています。 大判ではその数分の一程度の解像力でも問題にならないようです。

なお、コンパクトデジカメなどでは画面サイズが小さく、より高い解像度が要求されるため、あまり絞らないようになっています。
Q: 4×5をデジカメに換算すると何万画素か?

A: 銀塩フィルムと撮像素子(CCDやCMOSなど)の画素数の換算にはさまざまな計算方法があるようですが、35mmフルサイズ(24×36mm)の場合、約1,100万画素程度というのが妥当のようです。

4×5フィルムの有効面積はその約13倍ありますので、1億画素前後といえるでしょう。

参考資料:
 写真工業 2000年5月号 96ページ
        2003年3月号 101ページ
 http://www.clarkvision.com/imagedetail/film.vs.digital.1.html