<1> <2> <Darkroom>

*画像の保護
ファインプリント制作の目的の一つは画像を長期にわたって安定させることも含んでいて、今まで述べてきたファインプリントのプロセスは、結果として長期安定に対応できる方法でもある。しかし、制作したプリントは大気中の酸化ガスや自動車などの排気ガス、さらに空気中の温度、湿度にさらされることになり、その影響を受けて後日の変退色の原因となる可能性が大きい。そこで、画像保護をより確実なものにするために調色を行うことが最近では常識となってきている。

プロテクティブ・トーニング

・金調色GP-1   画像銀の表面を金属金で包み込むことで、周りの有害物質から画像を守る。   私にはほんのわずかチョコレート色になるように見える。また、黒の濃度も深みを増す。

・コダック・ラピッド・セレニウム・トーナー   すでに調合され市販されている調色液。多くのプリントは  そのままだとほんのわずか緑がかった色をしている。この調色液は緑を消し、  黒の深みを増す。

・セレン調色液と水洗促進液の混合液   ハイポ除去と調色を同時に行うもので、定着が終わった プリントを予備水洗して、コダックのセレン調色と水洗促進剤の混合液に入れる。 印画紙にもよるが  私は4〜5分くらいで濃いチョコレート色になり、打ち切ることにしている。 長く入れておくと赤みが増し、  私は好きではない。

*最終水洗
水洗器の利用と置換水洗
大事な作業であるが長く単純な作業になり、そのためにプリントに傷をつけてしまうこともある。そのこともあって、市販の水洗器の利用を奨める。私はゾーンY社の水洗器を使っている。最終水洗は40〜60分やることにしているが、プリントに着いた泡を取るために頻繁に上げたり下げたりする。プリントに着いた泡は水の流れをさえぎり、そこだけ水洗不足になってしまう。

左側は16×20inchサイズ、正面は11×14inchサイズの水洗器。それぞれ15枚のプリントが水洗できる。プリントのサイズを小さくすると倍のプリントの水洗が可能。手前は4×5inchサイズのフィルム水洗器。

水洗器がない場合は置換水洗を奨める。2枚のクリーンなトレイを用意して水をいれ、交互に5分間攪拌し水を替えながら12回くり返すと60分になり、ほぼ完全な水洗となる。



*プリントの乾燥
長い暗室ワークの中で作られたプリントをフェロタイプの乾燥用ドラムやRCペーパー乾燥機などに掛けることはシミや汚れの原因となる。
プリントの乾燥にはプリント・ドライスクリーンが最良で、クリップで吊るして自然乾燥する方法はシンプルではあるがプリントの余白にクリップの跡が残り、余白も作品の一部と考える時は難しい。

少数枚なら、よく洗ったタオルに並べるだけで間に合うが、市販のブロッティング・ペーパー(吸い取り紙にプリントを挟み、重ねていく方法)は効率的にはお奨めできない。

プリント・ドライング・スクリーン  アルミニウムのフレームにグラスファイバーのネットが張られ、11×14inchサイズのプリント4枚が乾燥できる。プリントの乾燥はイメージを下に向けて乾燥すると、大きなカールが防止できる。プリントの乾燥にはこれがベストだと思っている。

*フラットニング
ファインプリントとしてプレゼンテーションや展示する場合、ドライマウント・プレス器で熱を加えて、フラットにする方法が最良と思われる。米国シール社のドライマウント・プレス器が大変便利だ。
*ネガ修整
撮影時にフィルムの表面にゴミやホコリがついたまま撮影すると、プリントには黒い線や点となって現れる。大きく目立つ場合は慎重にネガ修整する。ビューワーボックスの上にネガを置き、ルーペで覗きながら鋭利な針でつついていく。ネガ上では透明な線や点になって素ヌケになっているので、そこに少し傷をつけることでネガ濃度とする。
*プリントの修正(エッチング)
両刃カミソリの刃を曲げて折ると、極めて鋭利なナイフができる。ハイライト部にある黒い点や線は、このナイフを使って少しずつケズリとっていく。表面のゼラチン層だけをうまくケズリとったとしても、プリントには確実に傷が残ってしまい、やむを得ない場合のみ行うようにする。
*プリントの修正(スポッティング)
1時間かけてスポッティングするよりもネガに十分に時間をかけて、丹念にホコリ、ゴミを取る方がずっと楽である。尚、スポッティングはあくまでも塗るのではなく、点にインクを置いていくこと。
また、多くの人の失敗例はインクが濃すぎることである。修整は根気が必要で辛い作業でもある。しかし、自分の作品が見違えるほど美しくなると、何時間スポットしても辛さを感じない時もある。
*プレゼンテーションと展示

私はできるだけシンプルに装丁する方がプリントには合うように思われる。研究会では次の二つの方法のいずれかでプレゼンテーションしたり、展示している。

(1) ドライマウント方式
2プライ(Ply)のミュージアム・ボードにドライマウントする。この方式はプリントが完全にフラットになるので展示効果は大きい。ただし、ドライマウンティング・ティッッシュやミュージアム・ボードが完全にパーマネンス性があるかまだ定まっていない点もあり、後でボードが変色してくればプリントにも影響が出てくる。

(2) コーナー止め
2プライのボードにプリントを直接にコーナー止めしてブックマットする方法で、プリントに余分な熱を与えることもない。美術館やギャラリーでのプリント収集や保管にはプリントのみ要求される場合もあり、個人で収集したり保管する時にボードがない分、スペース的には有利である。ただし、直接プリントに触れることになり扱いには十分注意が必要で、ホワイトグローブ(白手袋)の使用が欠かせない。

◎ 展示用フレーム
フレームの製造過程で使われる接着剤やホルマリン処理されたもの、塗装にもプリントにとって不適切なものがあり、注意が必要だ。

◎ フレームに組み込むガラスとアクリル
透明なガラスは平面性があり、ガラスの光沢がプリントに深みを与えるようにも感じられ、この点では好ましい。しかし反射も強く、プリントを見づらいものにしてしまうこともある。反射を抑えたコーティング・グラスもあるが、グリーンの色見が強く値段も高い。また、アクリル板の使用も有効である。

◎ バックボード
フレームの蓋の役割をするもので、ブックマットを均一に押さえて平面性を保つ役目をする。私は最近、ポリプロピレンでできているコルゲートシートを使っている。また、中性の紙でできたコルゲートボードもバックボードとして市販されている。

*プリントの保管(ドライキャビネットの利用)

◎ プリントの保管
ファインプリントとして完成したものは、同サイズの合い紙(インターリビングティッシュ)でカバーして重ねていくか、またはポリエチレンの袋に入れてストレージ・ボックスに収納し、スチール製のドライキャビネットに保管する。



<1>  <2>  <Darkroom>