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空から東京の桜を撮るようになったのは、25年前のふとした事がきっかけでした。機窓から毎日のように眺めていた、茶褐色であまり変化のない東京の町に、ピンク色のものが点々とあらわれてきた事に気付いたのです。 それまで何気なく通り過ぎていたのに、その時以来、桜を急に意識し出したのでした。あらためて見まわすと、いたるところに桜が咲いているではありませんか。そして東京の町が何となく明るく見えるように思いました。 桜の花はピンク色ということになっていますが、実際は白に近い淡い色です。それも、つぼみの時は、まだ薄いピンク色ですが、花が開くとともにだんだん白に近くなってしまいます。そのときには、まだそのことが分からず、どうしても桜のピンク色を出したくて、本格的に撮ってみようと決心したのです。 また、桜に葉や花の出方がいろいろあることも知りました。初めに花が咲き、花が散ってから葉が出るものと、葉と花が同時に出るものとがあります。同時にでるものは葉がいっしょに写ってしまうので、桜の淡い色が出なくなってしまうのです。そこで、花が葉より先に咲き、花つきが多く、しかも東京にたくさんあるソメイヨシノに焦点を合わせることになりました。 ちなみに、ソメイヨシノは、江戸時代末期に染井(現在の豊島区)の植木屋さんが、オオシマザクラとエドヒガンをかけ合わせてつくった”江戸っ子”品種で、明治になって東京中に広まったようです。初めはヨシノザクラと言われていたようですが、吉野山(奈良県)にまったくないため、ソメイヨシノに改名されたそうです。 |
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三月末ごろ、桜前線が北上してくると、毎日車で桜の咲き具合を見にいきます。そして天気予報とにらめっこ。東京の開花宣言の基準は靖国神社の桜ですが、同じ東京でも場所や木によっても違います。開花から散るまで、一週間から十日と短い命である上に、写真に向いているのは後半で、七分咲きのころが最もよいようです。それより早いと、枝の色に左右されて薄汚く写るし、それを過ぎると、真っ白に写るので桜のイメージがなくなってしまいます。また、満開に近くなって強い風や雨に遇うと、一夜で散ってしまうこともあります。 東京の桜を撮り続けていると、いろいろなことを発見します。その年によって咲き方(みごとさ)が違います。これは天候等の条件によるものだと思います。また、以前に写した桜が切られてしまったり、並木が少なくなったことに気付くこともあります。 東京には緑が少ないと思っていたのに、以外とたくさんの木があります。桜もまた、お花見の名所だけでなく、公園や学校など、人々の生活の周囲にたくさんあるのです。お花見というと名所に殺到してしまうようですが、私は、都会人の身近に、生活とともにある桜を撮り続けたいと思っています。 隅田公園の桜は対岸の浅草墨田公園と一対となって、下町の桜の一大名所となっています。そして、高速道路と隅田川にはさまているところが、なんとも東京らしい気がします。 桜は川や池のまわり、あるいは、お堀端というように、水辺に植えられていることがたいへん多いのですが、それは桜が水とあいまって、人々に安らぎを与えるからではないでしょうか。上野の不忍池や千鳥ヶ淵公園、井の頭公園などがその代表でしょう。お花見というと、やはりたくさん咲いているところに行きたくなるのが人情ですが、一本か二本だけ咲いているのも絵になるものです。ただ、住宅街にある一本の桜というのは、なぜか写真になりにくいようです。 多摩霊園の場合は、霊園内に点々と咲いているのですが、それがかえって霊園の雰囲気に合っているようです。この中に、私の好きな桜の景色があります。西のはずれの方に二、三本がひとかたまりになっていて、上からはピンクの綿アメのように見え、それがまた、まわりの墓石と調和してなんともいえません。この桜は何回か撮影しましたが、お花見の人陰を見かけたことはありません。 中央線・西荻窪駅の北に善福寺公園があります。ここも、近くの井の頭公園と同じように、池のまわりに桜が植えられています。桜の数はそれほどでもありませんが、お花見客が少ないのでその分静かです。池のはずれにボート乗り場があります。上空から見ると、大きな桜の陰に隠れてボートが見えないくらいなのです。 大田区の洗足池もすばらしい桜の名所です。とくに池の東側と北側にまとまっていて、花見の人々の姿が上空から見えなぐらい見事に咲きます。木も大きく、枝ぶりもよいからだと思われます。 また、そのすぐ南側の、東急・池上線の東雪谷付近の桜もすばらしいものです。ただ、ここは池上線の土手沿いに咲いているので、地上からの花見には不向きかも知れません。航空写真ならではの美しさではないかと思います。 |