| 象のオリ
軍用地の使用期限切れに伴う「不法占拠」で全国に知られるようになった楚辺(そべ)通信所は、読谷補助飛行場のすぐ近くにある。動物園の巨大なオリを思わせる直径約200メートル、高さ28メートルの円筒形アンテナが建っていることから一般に「象のオリ」と呼ばれている。
楚辺通信所にある知花昌一さんの土地236平方メートルの使用期限が切れたの1996年4月1日午前0時のことである。それから44日目の5月14日、裁判所の仲介で国との和解が成立、わずか2時間の条件付きながら国はようやく知花家の立ち入りを認めた。
その日、知花さんの家族や、支援してくれた反戦地主や弁護士、友人らが集まって、「オリ」の中の芝生の上でご馳走を広げ、基地に取られて以来初めて自分の土地に入ることを祝うことになった。
知花さんの母ウメノさんはその日、32個の折り詰め弁当を用意した。集まる人数は30人。2つ余計である。余った分はなんと基地内で自分たちの行動を監視する防衛施設局員の分である。
彼らはこの1ヵ月半、土地の返還を求める知花さん一家らの前に立ちはだかり、機動隊まで動員させ力づくで基地内立ち入りを禁止してきた。そんな彼らにもウメノさんはお弁当を振舞おうとしたのだ。(もちろん彼らは受け取らなかった)
オリのなかで彼らは三絃を弾き、オリオンビールで乾杯し、弁当を広げた。そして約束の4時が近づくと、全員でカチャーシーを乱舞し、ただの1分も過ぎることなく、ござをたたんでオリの外へ出た。
(「沖縄近い昔の旅」 森口 豁著 凱風社 1999年 より要約)
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