2つのガマ(洞窟)を分けたもの

読谷村字波平の鍾乳洞、通称チビチリガマで1945年4月2日に集団自決が起きた。

チビチリガマは米軍上陸早々に戦車や武装兵で包囲された。ガマの外に迫った米兵に竹槍で対抗した2人の男が射殺されたのをきっかけにパニックに陥った避難住民の間に”自決論”が台頭。この中にはサイパンの「バンザイクリフ」で集団自決を目撃してきたものもいた。

「自分を殺してくれ」と母親に懇願した18歳の娘が、母親に包丁で首を切られ殺されると、元従軍看護婦が自分の家族に次々と毒物を注射。互いに包丁や釜で首を切って死ぬ者、さらに男たちが布団に火をつけるなどして2時間足らずでガマの中にいた139人のうち82人が死んだ。

この事件は戦後長らく関係者の間でタブーとされ、公にされなかったが、1983年絵本作家・下嶋哲朗氏や、知花昌一氏らの手で聞き取り調査と遺骨収集が行われ、初めて世に知られることになった。

「敵につかまったら男は戦車でひき殺され、女はもてあそばれる」米軍上陸を迎えた沖縄ではこうした説が流布し、誰もが信じた。その結果、そんな惨めな死に方をするよりはと投降より自分たちの子供まで巻き添えにして自決を選ぶケースが相次いだ。慶良間諸島などでも同様の集団死が頻発した。

このような集団死は防げなかったのか。答えはこのガマから数百メートルも離れていないところにあるシムクガマにあった。

シムクガマにも約1000人の住民が避難していた。米軍が間近に迫っていることでガマの中はやはりパニックに陥り、自決を主張するものも現れたが、それを押しとどめたのがハワイ移民の経験があり、英語も話せる二人の男であった。

彼らはアメリカ人が民間人まで殺しはしないことを身をもって知っており、周囲を制すると先頭に立ってガマを出た。そして英語で米軍と交渉、ガマの中の1000人の投降を実現させた。


(「沖縄近い昔の旅」 森口 豁著  凱風社  1999年 より要約)

 

 

<チビチリガマレポート>

読谷村のさとうきび畑のなかに、小さい谷のようになっていて、川が流れている静かな場所がある。そこにチビチリガマはあった。金城さんのアトリエや、大きくてきれいなリゾートホテルも近い。

姫子:姫子ねー、正直言ってちょっと足がすくんだねー。一人だったら絶対引き返してたと思う。
でも怖いとか思ったらいけないなあと思って頑張って階段降りたよ。

Dino:姫子が怖いと思ったのは、素直だと思うよ。僕もチビチリガマの前に立った時は、頭の中でいろいろな映像が出てきてさ、泣いちゃいそうだったなー。

姫子:考えてみたわけ。当時は天皇や国のために死ぬのが美徳だとされていて、そういう教育を受けたから、みんな投降より自決を選んだ、って言われてるでしょ。
それって今となっては全然考えられないことなんだけどさ、もし今の世の中でね、自分たちが見たこともない宇宙人と戦っていて、その宇宙人が攻めてくるとする。そいつらは私たちを見つけたら強姦して八つ裂きにして殺してしまう、とずーっと言われてるとするよねえ。
それを頭から信じてたらね、実際その宇宙人がすぐそばまでやってきたら超超超!怖いと思うわけ。
天皇とか国とか関係なく。
想像してみると、自分だってそうやって自決する方がまし、って思ったかも。

Dino:自決するほうがまし、か。戦争っていう極限状態においては、姫子が言ってるみたいに考えちゃうのかもなー。

姫子:自分の娘の首を包丁で切る、日本兵に命令されて泣いている赤ちゃんを自分の手で絞め殺す、爆弾の中、怪我をして倒れている人に背を向けて逃げる、、、戦争っていうのは平和なときには考えられない判断を人に迫る。
そのときに正常な判断が出来なくたってしょうがないと思うわけ。
そもそも、何が正常かっていうのもわからないわけだし。
問題は、そういう状況に人々を追い込んだこと自体にあるわけだから。

Dino:このガマの中だって、自決しようという人と、投降しようという人でずいぶん口論になったんだからさ。
アメリカ兵だってガマの中まで食料や衣料を持って「殺さないから出てきなさい」って入ってきたんだよ。
そこまで言われてもアメリカ兵の言葉を信じられなかったんだよな。
原因の一つとしては、日本軍は中国で民間の人を強姦し、物資を奪い、殺してきたからなんだよね。
だから同じことをされると思ったんだ。ガマの中に中国帰りの兵隊がいたらしいからさ。

姫子:情報の大切さがわかるよね。同じ状況になっても、一人の自決者も出さなかったケースもあるんだもんね。
この事件を考えると、本当に辛くなる。姫子はここに行ったあと3日間ぐらい、眠れなかったもん、、、

「明日 あなたは笑っているのだろうか 抱えきれない両手いっぱいの悲しみの果てに」(Cocco 『卯月の頃』)

 

 

 

   

入り口にある鎮魂の像。 ガマの入り口。遺族の意志によって立ち入り禁止になっている。
中は本当に真っ暗。

 

入り口にあるチビチリガマの歌。